西澤保彦(タック&タカチシリーズ)の話。 
2008
タック&タカチシリーズは非常に屈折した・泥臭い恋愛モノだよなぁ、と。
うん、体裁としてはミステリなんだけど、このシリーズを高く評価する人は多分ミステリとして読んではいないと思う。
- 彼女が死んだ夜(’96) 2年生・夏の事件
- 麦酒の家の冒険(’96) 2年生・夏の事件 慰安旅行
- 仔羊たちの聖夜(’97) 2年生・冬+1年生・冬の事件
- スコッチ・ゲーム(’98) 回想1
- 依存(’00) 回想2
(作中の時系列と刊行順・年)
「彼女が死んだ夜」については「普通の長編推理小説」だと思っておいてとりあえず問題ないです。
タック・タカチ・ボアン先輩・ウサコの4人組もこの時点で登場。
自己中心的な振る舞いで犯罪を犯す人、それに振り回される人、という題材はこの時点から現れていますが、「タックとタカチのお話」という臭いはまだしません。
「麦酒の家の冒険」は、前作で仲間を喪った痛みから立ち直るために、と企画された小旅行が舞台。
舞台設定の突飛さは群を抜いていますが、「タックとタカチのお話」という観点ではぶっちゃけ読まなくても大差ないですかね。
あと読んでるとビールとツマミが欲しくなりますかね。
「仔羊たちの聖夜」は例の4人組の出会いのエピソードが語られます。
また、事件解決への動きの中で、「タックとタカチがコンビを組んで」「タカチが先頭に立って」調査して回るシーンがあるのですが、その場面を通じて「タカチが何を憎んでいるのか・何と戦っているのか」が明らかになります。
……「明らかになる」は嘘ですかね、「執拗に描かれます」。
それまで比較的「冷静沈着」だっただけに、「何にそんなに執着するの?」という点は興味深く読めるのではないでしょうか。
「スコッチ・ゲーム」はタカチの「過去の事件」の回想と解決の話。9割方タカチで1割タック、ボアン先輩とウサコは出てきません。
タカチは「他人を容易に近づけない雰囲気を持った人」として描かれていますが、「なぜそうなったのか」が語られます。(あと女子寮と百合も出てきます)
ぶっちゃけるとタカチと父親の確執の話で時期的には「お前エヴァ見ただろ」な感じでしょうか。
「依存」は「スコッチ・ゲーム」の返歌です。
前作は「タカチの過去の因縁をタックが断ち切る」話でしたが、今回は「タックの過去の因縁にタカチが向き合う」話。
配役が逆になったところで予想が付くかもしれませんが、タックと母親の確執の話となります。
ただし、構成の工夫によって「自己中心的に振舞う幼稚な人」の話が短編集のように繰り返し語られ、メインの話のインパクトを倍化させている、という点は特筆に価します。
繰り返し語られる「自己中心的に振舞う幼稚な人」の話のトリとして、今回の「ラスボス」が登場するわけですが、話の流れでこの「ラスボス」が無茶苦茶強そうに見えるので、そのラスボスを更に圧倒する我らがタカチの男前っぷりったるや素晴らしいの一言。
あともしこんな風景が眼前で展開されたら俺は泣く。
以下、前の記事からの流れを受けて。
シリーズで繰り返し繰り返し語られるのは「一方的で都合のいい、思い込みと愛情の押し付け」、「それに起因するディスコミュニケーション」です。
その根底には「『わたしはあなたを理解している』という誤解」があります。
「あなたは嫌がるけど本当は○○するべきです。いいから黙ってわたしのいうことを聞きなさい」みたいな図式ね。
それらは非常に「醜悪なもの」として描かれるので、依存のラスト、(軽くネタを割るので注釈1 )の二人の姿がちょっと神々しくさえ見えます。
この点については幻冬舎文庫の解説が凄く良いので引用。
(略)
それは例えるならば、探偵小説、青春小説、教養小説、恋愛小説、それら全ての要素が一体となり奏でられる、美しくも哀しき調べの倒錯したロンド。そこでは、「愛情と束縛」という主題が、特に低く弱く、時に高く強く、繰り返し繰り返し鳴り響く。そしてクライマックス、二つの独奏楽器が、互いにうち消しあうように烈しく鳴り響いた後に訪れる静寂。ミステリ至上屈指の、美しくも切ない幕切れに、読者は思わず溜息をもらしてしまうことだろう。安心、満足、寂寥。それらがない交ぜとなった溜息を。
うん、本当に溜息ですねこのラスト。
「こういうハッピーエンドもあるんだなぁ」と。(いえ全然終わってはいないのですが)
この辺から数えて一週間ぐらいぶっ飛びましたが本望です。
著者/訳者:西澤 保彦
出版社:幻冬舎( 2008-06 )
定価:¥ 680
文庫 ( 366 ページ )
ISBN-10 : 4344411447
ISBN-13 : 9784344411449
著者/訳者:西澤 保彦
出版社:幻冬舎( 2008-10-10 )
定価:¥ 720
文庫 ( 419 ページ )
ISBN-10 : 4344412125
ISBN-13 : 9784344412125
入り口にするならこのどちらかだと思うのでそんな感じで。
(依存だけ読むとか愚の骨頂なので絶対ダメです)
- 「どちらかがどちらかを管理するのではなく、どちらも相手に依存する」ような関係 [↩]




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