面倒だなぁもう。
予め断っておくと
「本格」? 虚辞でしょ。
これは同意しても良い。(だから定義しようとすると紛糾する)
でも固定的・定型的な実体/実態がないからって価値がないわけじゃない、というか、勝手に価値を見出す分には自由だよね。……まぁ鰯の頭を有難がってると周囲からは奇異に見られるかもしれませんが、奇異に見られるのが嫌なら本格なんて捨てちまえでございましてよ。
さて俺の「本格」ですが。
◎ 謎が論理的に解明されること
○ 解明の際は、サプライズがあることが望ましい
原則論としてはこうなるかなぁ。「フェアかどうか」は後者の条件から結果的に導き出される公理のようなもので、議論のレイヤーがちょっと高いです。
あとそれから「謎」「論理的に解明」「サプライズ」についてはそれぞれ議論の余地ありまくりですが、踏み込みません。
(後期クィーン問題とか絡んできます・何処かで「読者と作者の共犯関係」みたいな議論を見たことがある気がしますがホントに気のせいかも知れません・地獄だぜ)
適当に例示。
密室がありました。探偵役がドアを破って室内に進入すると、中には男Aが倒れていて、そばでは男Bが死んでいました。
ここまでの条件で犯人が男Aだったらそれは「本格」ではないだろうと。謎がねーよ、と。
これが
密室がありました。探偵役がドアを破って室内に進入すると、中には男Aが倒れていて、そばでは男Bが死んでいました。
男Bは鋭利な刃物によって刺殺されていましたが、部屋には窓はなく、また室内からは凶器が発見されませんでした。
となると「犯人は男Aだとして、どうやって凶器を処分したのでしょうか」という形で「本格」っぽくなってきます。
更に
密室がありました。探偵役がドアを破って室内に進入すると、中には男Aが倒れていて、そばでは男Bが死んでいました。
男Bは鋭利な刃物によって刺殺されていましたが、室内からは凶器が発見されませんでした。部屋は刃物が通るような窓はありましたが、周囲を捜索しても凶器は発見されませんでした。
となると「犯人は男Aでしょうか、その場合はどうやって凶器を処分したのでしょうか」と、ますます「本格」っぽくなってきます。(今ここでは男Cとか女Dが出てきていないので少々難がありますが)
(ホワイダニット方面で発展させるのもアリですが、例としての使い勝手と筆者の力量によりここでは略)
ここまで「謎」にフォーカス。
解決編行きましょう。
最後の例を引き継ぎます。
鑑識が見落としていたが、実は凶器は室内にあった。
死ねと云われるケースです。
地の文覆してるしサプライズないしで最悪です。(平然と地の文を覆したという意味ではサプライズですが……)
男Aが窓から捨てた凶器を「誰か」が回収してしまった。
今ここでは伏線も糞もないので「ふざけんな」ですが、そこそこ部屋の周囲の描写をしていれば、また「誰か」の存在が示唆されていれば、それなりにアリです。というか「謎-解明」がこういう構造になってる作品は結構あります。
(難しいのは「誰か」の存在を示唆しつつも読者には犯人と指名されないようにしなければならない、という点です。ここで俺にそれが書けるなら、明日からプロになりますw)
男Aはアルセス神なので槍を出したり消したり自由自在です。凶器は紀元槍。
仮にアルセス神だったら「槍を出したり消したり自由自在」なのかは知りませんが、普通は無しです。
しかし、仮に「そこ」がゆらぎの神話界であると銘打たれていたらどうでしょうか。また、探偵役がドアを破る際に、探偵役の「特殊能力」でドアを破っていたら? ……まぁ平たく云うと「生ける屍の死」の方向で「トンデモ設定を多数導入しつつ最終的に本格」という作品は成立し得る、という話です。(今この例では描写が足りていませんが)
上記の中で「誰かの存在」「舞台がゆらぎ界である可能性」の描写についてを「フェアであること」と読まれてしまうとそれは違います。フェアは手段であって目的ではない。サプライズの演出のためにはフェアに振舞っておく必要がある、ということです。(俺としては)
とはいえ単純に「サプライズ>フェア」かというとそうでもないのはご存知のとおり、ということで。
ところで
フェアだとかアンフェアだとか、叙述がどうとか倒叙がこうとか、一部の偏狭なミステリファンの間でしか通用しない話につきあうのに飽き飽きしたので、気晴らしのために出かけることにした。
そう、「一部の偏狭なミステリファンの間でしか通用しない話」だと思っていて、その「一部の偏狭なミステリファン」ってのは「あなたが本格だと思うものが本格です」とだけ云えばなんとなく通じる人を指すんじゃないの、と思ったり。
定義論とか境界条件とかの議論に積極的に踏み入るつもりがないので、俺はそれで困らないのですが。
いつだってそういうのを啓蒙する(好きな表現じゃないが)人が必要で、啓蒙する人が居なくなったらジャンルが先細る、ってのは承知していますが、俺はどっちかっつーと背中で語るタイプ(渋いんだぜ)であって懇切丁寧な説明は他の人にお任せしたいですよ?(初心者の相手は疲れる割に楽しくない……w)
軽く余談。こないだ書いた
第一条 「フェア」について
・一項 作者は作品のフェアさについて保証すること
・二項 作者が作品に対して行った「フェア」を読者が承認すること
これさぁ、
「フェア」についての定義で「フェア」という語を使っているので循環していますが、まあ作品に課せられた何らかのルールを作者と読者で共有する位の意味でしょうか。
って云われちゃったけど、GNUの定義を念頭に置いて敢えて回したんだよね。前回補足するの忘れてたけど。(ノー説明だと判り難いかなぁ、とは思ったけど些事だから略した)
特殊な作品世界・作品ルールを構築する作品も、このルールにより議論の俎上に乗せることが可能になるわけです。実は正確さよりカッコ良さ重視で考えたんだけどね……w
あ、これは「フェア」についてですが本エントリは「本格」についてなんで論点違います。両者を統合して一つの論に、とかはパスですw
……って蛸さんに云っても意味ないか。まぁ良いや。
見直してみたら書き漏らしていたいくつかのことについて追記
密室、連続殺人、見立て、その他の「コード」は、なくてもOKです。但し、あると「本格ポイント」が貯まり易いので、サプライズがなかったりアンフェアだったりしても「本格」で通り易くなります。
サプライズを目指したけれども伏線バレバレで驚かなかった、という場合は「出来がイマイチな『本格』」と位置づけられるのかな。
精緻な伏線が探偵の推理によってパタンパタンと組み上がっていくようなタイプの作品は、「サプライズ」が変形したものと解釈しなさいよっ!(CV釘宮)