▶次へ
1/2/一括

2007年12月01日

狼と香辛料 (電撃文庫)狼と香辛料 (電撃文庫)

70/100

支倉 凍砂 / は行の著者

発売日:2006-02

 サイン会の待ち時間が当初予想より遥かに長くなりそうだったのでその場で購入して列待ちの間に読んでいた


 大雑把な結論としては恋空(ケータイ小説)をスイーツ(笑)とバカにする人はライトノベルもスイーツ(笑)扱いでいいんじゃねーのかな、という。……ああこれは狼(略称はこれでいいのか?)に限らず。
 恋空は読んでないけど。

 とりあえず文章ひでーだろ。
 確かそう、以前には9Sだったかな、でも「評判良いから読んでみようと思ったら文章があんまりなんですが」状態だったことがあると記憶しているのだけど、地の文の人称がおかしい。
 ゲームで云うとクオータービューってんですか、主人公後方に設置されたカメラ視点っぽいんだけど語り口が完全に主人公の意識と同調しているという、「これはえーと、国文でミスヲタな俺に喧嘩売ってんのかな」(後述)ぐらいの代物で。
 小説一般論として云うなら「神の視点で心理描写をすんな」て話ですか。

「国文でミスヲタだと視点にうるさい」は(説明不要であってほしいのだけど一応説明しておくと)、国文はそのまんま文法とか作法の話だから置いといて、ミステリにおいては地の文を使った叙述トリックというのは結構平然と存在するのです。で、「地の文を使った叙述トリック」があることを書く方も読む方も承知しているから、(特にそこにトリックを仕込む場合、)「いかにトリックがないことを装うか」に腐心する訳ですね。読者も勿論「何か不自然な箇所はないか」と思って読む。
 で、それは本来的には「文法・作法に忠実であるかを重視するだけ」なので、新聞だろうがエッセイだろうがライトノベルだろうが適用できる読み方なのですね。
 でラノベは、そういう読み方をすると死ねる作品の比率が高いとしか思えない。(桜庭とか米澤を持ち出さなくてもあざの耕平とか全然OKです。あくまで比率の問題)

「感感俺俺」とか「のだった」とか、アレな文章を揶揄する表現てあるじゃないすか。
 で、ラノベでの発掘例ってないじゃないすか。
 多分ね、ピンからキリまで調べようと思ってもキリがないからなんじゃないかな、ってあれ別に巧いこと云うつもりは……。


 文章抜きにすると、途中えらい御都合主義だったような気がしたけど(兌換紙幣と不換紙幣が適当にブレンドされたような通貨システム? も含めて)、きっと恐らくメイビー一切の"細かい"ツッコミはご法度なんだろうなって思ってスルーするようにしてみたら(脳内フィルタの粗密ぐらい制御できなくてはヲタは務まらぬw)ホロはそれなりに可愛かったとは思った。
 でもこの方向性なら三只眼吽k(ry
 ……いや、まぁ、良いけど。


 つか俺的には真田鈴@大王が本番です! ><

2007年10月28日

リベルタスの寓話リベルタスの寓話

85/100

島田 荘司 / 文学・評論 全般

発売日:2007-10

 読了です。
 後半を追記しました。


 前半つーか表題作。
(単行本としては中編×2)

 どーんーだーけー!
 ……オビに書かれてるからネタバレじゃない、ということでさらっと触れてみるけど、「ボスニア・ヘルツェゴヴィナで発生した猟奇殺人」と「MMORPGでのRMT」を接合してミステリにしようというのが既にして異次元の仕事だわねw

 率直に云ってRMTを話に登場させたことがプラスの効果を発揮しているかというと微妙な気はしなくもないですが、作者的には「練りに練っての」ではなくて「興味あったんでやってみた」レベルっぽく、「この力技を片手間かよ……」と思うことしきり。

 作品的には色々容赦ないです。ボスニア・ヘルツェゴヴィナ要素がRMT要素を完全に食ってるというか。
 ボスニア~というと「さよなら妖精」を連想するのですが、あちらはあくまでも「マーヤの故郷」としての関わりだったのに対して、こちらは現場がモロにそれな訳で、キツさは比べるほうが無茶というもの、かな。


 後半。追記ここから。
 どえらい鬱。
 あと、ギター侍やりつつ強烈にネタバレなんで伏せておきます。
 話の流れ的に伏せてもネタバレなんですが、どうせ(この本を)読まないだろ?w

 お・れ・た・ち・ボスニアから来た俳句好き、クロアチア系とセルビア系。
 WW2はあったけど、水に流して30年来の友人さ~って言うじゃない?
 でも何年経とうがボスニア地区の人種間の恨みは骨髄、寧ろ寿命が近いことを悟った今こそ行動に移す最後のチャンスですから~~~! 残念!!
 お前が生きたままじゃ俺は死ねん、
斬り!!

 この手のネタは書いてて自分でも辛いんだが……。
 まぁ、そういう話でした。
 小道具色々凝ってたり(あるいは強引だったり)したんですが、話の構造で全部吹っ飛びました。

 ……えーと、作品自体はフィクションですが、フィクションのようなバックボーンは現実のものですからね、念のため。

続きを読む "リベルタスの寓話、ようやっと読了。" »

2007年10月21日

(全壊気味)第一報はもう書いたので、以下流し気味にまとめます。

 える様が概ね一人勝ち。
 福部&伊原というYet Another不器用カップルもいる訳ですが、見事に空気でした。
 ホータローは「俺がラブコメシチュエーションに放り込まれたら多分こんな感じでフラグ潰して回るんだろうなぁ」級のダメさを発揮、が故の親近感もありますが、ふと我に返ると「そんなホータローでも3年間フラグ漬けにされれば流石に芽の一つも出るだろうというのに俺は」、的に鬱です。(何それ
 ……探偵役? あれなら俺でも務まるぜ!!?(フィクションと素で張り合うのって70年代生まれ的にどうかな、って事は気にならないでもない)


 朴念仁と天然の組み合わせってのは金脈なのかなー、と。
 意識して自制──それも、過剰に──するのがニヤニヤを誘発する、ぐらいの意識はあったけど、仕掛けるネタ仕掛けるネタ律儀に全部食らっていったような気がします。はいはいメディックメディック。

2007年10月09日

 あー。(←第一声)


はいはい傑作傑作」というか。
 あるいは
忘れてたけど江神シリーズって傑作ぞろいだったよな」というか。

 十年以上の間隔を経て執筆された人気シリーズの新作というと暗黒館の殺人を想起するわけですが、……失礼、暗黒館の殺人なんてモノは存在しませんでしたねw 何の気の迷いでしょう>俺

 記憶の中で美化されていた点があったとしてもなおその期待に違わぬ出来でした。最高。
(このミスはともかく本ミス1位は決まりだわ)


 江神さんがふらっとお出かけ。行く先はどうやら「最近話題の宗教都市」。
 大丈夫だとは思うけどちょっと不安だな、って思ってEMC(ミス研)の面々が後を追ってみたけど「城(本部の建物)」の手前で門前払い、翌日出直したら今度は入れてもらえたぜ、って殺人事件とかマジッスカwww もう帰りたいんですけどwww ダメ!? っうぇwwww

 てな展開で。(軽いな)
 宗教団体の本部に缶詰状態、自由行動が制限されている上に情報は基本的に相手経由(≒根本的に疑いがある)、という状況でのガチ本格です。「読者への挑戦」もあります。
 直接的にはフーダニットですがホワイダニットも漏れなく付いてくるし更に……、と。ページ数多いですが内容も濃い濃い。

 下手に口を開くとネタバレを掠って行きそうなのでこの辺で締めますが、「探偵役がヒントを口にした瞬間に事件が整理されて背中がゾワっとする感覚」、久々でした。

2007年09月22日

 すっげー微妙。
 ……いや、えっと、良い意味で微妙。

 田舎の村がありまして、ここには3つの「家」がありまして、で「村長」をどの家が出すかで骨肉げな有様でした。
 跡取りに恵まれなかった「一の家」で、待望の跡取りが──しかも、双子で──生まれ、そのまま彼らは成長していったのですが、「十三歳の儀式」の時に、双子の片方が井戸に落ちて死ぬという事故(事件?)が発生します。
 それでももう一人そのまま成長し、やがて「二十三歳の儀式」を迎えるのですが、そこで今度は彼が首を切られて殺されてしまうのでした。

 ……殺人事件の本体についての概略を述べるとこんな感じです。あ、括弧内は作中では固有名詞が与えられています。(そのまま書いても判らないので一般名詞で説明)
 すっげーぶっちゃけますが事件そのものはあんまり面白くない
 なんというかな、まだるっこしい周囲の説明が多すぎで、雰囲気があるといえば雰囲気はあるんだけど、雰囲気にシフトしすぎで「状況を読者が整理して脳内で再現する」といった読み方には向いていないというか無理。(俺の場合は、ですがね)

 本作、ざっくり450ページあるのですが(原稿用紙換算で千枚前後かな)、ざっくり380ページまでは「雰囲気を味わう」「広義のミステリ」に分類される作品だと思っていました。380ページって何よ? ……無論、「解決編の始まり」ですね。

 いやいやいや吃驚ですね、雰囲気ばっかりで(本格)ミステリ的にはイマイチと思っていたら、という。野球で云うとフォームがアンダースローで「打たせて取る技巧派か」と思ったら胸元に160km/hがギュン! みたいな。
 とにかくね、俺的に「本格」の何が楽しいって、こちらの予想をひっくり返されることほど楽しいことはない訳ですよ。
 で本作の場合、本編の解決自体は「ふーん」程度なんだけれども、その後の周到さ、というか、「本編だと思っていたものがデコイだった感」というのかな、これが最高。「ほう」「ふむ」「なんと!」……かな。
 説明が隔靴掻痒ですねw ……書けねぇもんなぁ、こんなの。

 ページ数が2/3ぐらいに圧縮されてれば「誰彼問わずとりあえず読め」レベルで薦められるんだけど、流石にちょっと躊躇はあります。(道中が苦にならないなら良いんだけど、人を選ぶんじゃないかなー。)
 がしかし、これはちょっとした収穫ではありました。金と暇があるなら、是非です。

2007年09月09日

「私たちのミステリー!!」

 ……いや正直オビの方向性はどうかと思いますがね?
「ケッ」て感じですが。


 いやでもこれべらぼうに良いですわ。
 それも、米澤(古典部)を愛読するようなラノベ系の読者ではなく、それなりに年季の入った本格系のミステリ読みにとっては。

 つーかですね、──えーっと、軽く歴史のおさらいをしておくと今の西尾を頂点とする脱格系の隆盛の前には森・京極に代表される新本格第二波というものがあって、その前には当然新本格第一波がある訳で、その第一波にも無論基点となる特定の作品がある訳で、──「十角館の殺人」に作中で言及する新刊ミステリと紹介して興味持たなかったらミステリ読みじゃねえだろうよ、と。いやまぁ言及といってもほんの一瞬ですけどね。そして、言及箇所を俺がここに引用できないような言及の仕方なんですけどねw(と書けばピンと来る人も居るだろう)

 ……えー、順番が前後したけど、ストーリーラインを。

珍妙な条件のバイトの募集があった。「時給1120百円」
仕事の詳細は、一週間、24時間×7日間、何処とも知れぬ場所に隔離され、「人文科学的な実験のための観察対象」となること。
で、人が集まって、実験が始まった。

 僻地に立てられた館といい、氏素性の知れぬ参加者といい、古典ミステリからの引用&材を採った小道具群といい、なんというかコレステロールかなり高いです。(どんな比喩だよそれは)
 しかしそこは米澤、泥臭さを感じさせない、というか寧ろ「コレステロール超高いのにサラサラ行ける口当たりのよさ」が不気味なほどです。いや原因は明確で、本作中の殺人があくまでもゲーム(実験)だからってことなんですが。
 生身の人間ぽさがあまり要求されないのですね。今年の新刊扱いという点では密室殺人ゲーム・王手飛車取りとも一部印象が重なるところがありますが、あちらは「意識的に軽く軽く引っ張っていって最後に突き落としてきた」のに対してこちらは「そんなことを意識してない(ように見せる)」という違いが大いです。

 ……まぁ良いから読もうや、話はそれからですよ。

 短☆編☆集!(遊戯王ここまで)


「ハッピーエンドにさよならを」ということで、バッドエンド・ブラックな締めで統一された短編集です。11話入って全319ページだから平均すると30ページ弱……ということになりますが、6/10/12ページの超ショートがあるので実質もうちょっと長いと見て良いでしょうね。

 ……ま、ぶっちゃけそれなりに当たり外れはあります。
 ので、「全員即座に買って読め」とは中々云いづらいです。(ミステリ野郎は勿論読め)
 が、それはそれとして「今から本屋ダッシュして立ち読みして来い」な話が一編ありまして、それが上記超ショートの一つ、「永遠の契り」です。

「大学生のミツル君の家に憧れのハヤサカさんが来ることになったんだって!!」
kwsk
「お土産にケーキとか凄くね凄くね凄くね?」
SNEG?

 てなストーリーラインなんですが(上記は演出が濃いけど)、このヌル甘い「ハァ?」な設定を半ページで真っ黒く染め上げる歌野の性格の悪さ(強い褒め言葉)ったらねーですw
 いやなんというかね、「なんというラノベ臭、と思ったら」の豪腕? 急転直下? いやちゃんと伏線は張ってあるんだけれども。

 返す返すもミステリ読みというよりラノベ読みに是非読んでほしいです。10ページだから。チンタラ読んでも10分かからないから。

 他では、ミステリ的に優等生的な作りの「おねえちゃん」、サイコミステリというにはアレ過ぎる(必ずしも褒めてない)「消された15番」、歌野の某作品を連想させる「玉川上死」、ラスト一作を綺麗に締めた「尊厳、死」あたりは言及されやすそうだと思いました。

2007年09月02日

 えーっと。

 大学生の4人組が居て、授業を受けてる先生(♀)が居て、その息子(小学生)が居て、あとは部屋が動物王国と化しているまた別の先生(♂)が居ます。
 小学生の子が車に撥ねられて死にました。
 その直前、直後に、「あとから思い出すと気になること」がありました。

 ネタバレにならないの、ここまで。
 以下、軽くネタバレ気味なので追記へ。

続きを読む "下らない会話、多しw" »

2007年07月16日

 読んだのちょっと前、凄かった

 懲役2年の刑期を終えて出所してきた主人公が引退を目前にした看守の「最後の一仕事」を手伝うことに、というのが基本の筋。(罪状は傷害致死)
 ──最後の一仕事とは、「死刑囚の冤罪を晴らす」こと。
 内容は、事件発生当時の記憶を失っている(と本人が主張している)被告が、7年ぶりに当時の記憶の一端を思い出したというもの。僅かな記憶の断片は、被告自身を十三階段から救い出す命綱となり得るか?

 判決から7年前後が経過しているという設定が時間との戦いであるという要素を強調。他方、主人公の実家も(賠償金で)経済的に困窮し、こちらも成功報酬を手に入れなければ破綻は時間の問題。
 特に終盤、「冤罪を晴らすためには真犯人を突き止める以外にない」という方向へ舵が切られてからの調査と死刑執行のスピードレースが熱すぎ!
 ……実は本作、看守の過去も服役囚の過去も話の本筋に密接に絡んできます。最後はなんか犯人探し置き去りで看守と服役囚が非常に燃える展開!!(これぐらいならネタバレじゃないよな??)

 複数の要素(多すぎて書けませんw)が綿密な計算の元でピタリと配置されている、疑いもなく傑作ですこれは。読むべし。

2007年06月29日

 最高傑作級~~!! って云いたい気分だっ。
 ……俺っぽくだと、…………大☆傑☆作!!、かな?

 未来を「ビジョン」として予見することがある青年を軸に短編が5本。(うち一本はこの青年が絡まないシリーズ外。何故かは不明)
 未来を予見するのがどうミステリになっていくかというと、「そこで予見した不幸な未来を如何にして回避するか」という方向になる訳です。(ただし、青年は出てくるけどビジョンの予見が登場しない話もあります)

 リーダビリティがバカ高いという点は抑えておいて、しかし俺が特筆したいのは別の点。


 ひぐらしっぽいのよ。
 祭囃し編。

「不幸な未来」を予期してそれに立ち向かうという筋はさておいて(この時点で既に兆候はある)、途中途中の強引な話の流れ、あるいは「えー警官そんな反応?」な無理目な展開、そういうネガティブ要因がある一方で、とにかく全力で未来を獲得しようとする態度であったりあるいは力及ばないとしても「それが私の未来」と受け止める潔さであったり、はい率直に云って大好きです。
 心が騒ぎます


 著者略歴見て知ったのですが、乱歩賞取ってるのね。ああそりゃガチですね、と。
 ……とりあえず刻んだぜ、高野和明というその名をな!

2007年06月27日

独白するユニバーサル横メルカトル独白するユニバーサル横メルカトル

60/100

平山 夢明 / その他

発売日:2006-08-22

 特筆する材料がなかったら割と感想書かな気味ですが。
 あったので。

 このミスで独走1位だったと記憶している(スコアは忘れた)ので読んでみて死んだ。
 ……俺グロ耐性ないんだからなっ!(涙目)

 あとそもそもこれどう考えても本格の範疇じゃねーだろ。(本ミスじゃなくてこのミスだから、とはいえ……)


 相互に独立した短編が八編の短編集。
 俺の価値観ではホラーになるのとSFになるのが半々、うち一部の作品は「広義のミステリ」としても認められるかなという程度のミステリ度。リアル知人から「面白いミステリだよ」といって渡されたとしたら「頑張って半分読んでギブ」か「我慢して全部読んでから全力で殴る」かのどっちかだろうな。

 略歴の記述に「怖い話」だの「快楽殺人」だのの記述があった時点で若干の違和感はあったのですが、とにかくもう全部の話で人間がけったいな死に方をします。けったいな死に方というか、加工? 骨が折れる首がもげる皮が剥けるには飽き足らず、釘を打ったり槌で叩いたり酸を飲んだりと「もう止めて! 俺のライフはゼロよ!」状態でした。

 設定や語り口、つまりは要するに「小説家としての技量」については見るべきところもあるんでしょうが、いかんせん志向性が俺的に最悪。公平に(中立的に)見るのは無理っす。


 それはそれとして。
 オペラントの肖像という話の設定がビームで三宅乱丈がやってるイムリと被るところがあるので、読み比べてみると「似たような素材でも料理方法が違うとこうも味が変わるのか」な気分を味わえます。四肢のうち三本切断した肉達磨が出てくるぐらいでグロ的にはこの本の中で最軽量クラスなんで、多分とっつき易いですし。(←素で)

2007年06月14日

 出たとき(奥付からして3月頭頃?)妙に村上春樹が読みたい気分になっていて、たまたまそのタイミングで「チャンドラーを春樹が新訳」な本書が出たのでつい思わず買ってしまったという物件ですよ。
 3ヶ月積んだのはご愛嬌。

 で、買ってから気付いたんだけど旧訳の「長いお別れ」は読んだことあったのね。元々翻訳モノはあんまり好きじゃない&特段の印象が無かったんで忘れてたけど。(買ってきた後本棚を見返して「あれ、ある」と)

 ……だったんだけど、今回はちょっと良かった。(「ちょっと」は婉曲表現)
 最後の最後の別れの場面で、強烈に切ないというか寂しいというかつまりは作者の術中、べっ別に泣いたりなんかしてないよっ、ただちょっとこみ上げるものがあっただけだよっ!!
(キャラが良く判んねぇ)


 村上春樹の(質量ともに相当な)あとがきもくっついていて、それを読んで初めて「(良く出来た)ハードボイルドが持つ独特の魅力」について明示的に意識できたのも良かった。(これは俺にとって、だけど)
 思考や感情を直接語る代わりに、行為を淡々としかし精密に描写する、結果としてそれは遥かに雄弁に思考や感情を浮き彫りにする、と。云われてみりゃ「まぁそうだろうな」なんだけど、意識はしてなかったよ。

 例の「最後のシーン」でいうと「耳を澄ませていた」とかその周辺の描写がそれだね。描写の淡白さが寂しさをより加速させるというか。


 そして、ということは、ハードボイルドというジャンルは他のジャンルよりもより一層経年劣化が激しいのかな、という気がしたのだがどうなんだろうね。
 勿論古い訳だって読めなかない訳だけれども、また他のジャンルの作品が経年劣化しない訳じゃないんだけれども、シナリオだけでなくテキスト・語り口自体がストーリーの一部となるのは(厳密に云うと「読者がテキストを消化することを織り込んで『ストーリー』が構成されているのは」という感じかな)、ジャンルとしてのハードボイルドの特徴なんじゃないかな、と。

 ハードボイルドは新訳に限るね! ←結論
(酷いオチだ)

2007年05月27日

人類は衰退しました人類は衰退しました

80/100

田中 ロミオ / 文学・評論 全般

発売日:2007-05-24

 うわw

 なんかフツーにライトノベルというか児童向け小説してますね。
 一部に「らしい」言い回しとかありますが、この巻単独ではどうという印象のあるものではないです。非ッ常にユルい。

 ……が、伏線としてはフツーにメタ&ループのフラグが立っていて、そのうち酷いことになるかも♪ という気はしました。
 まー、次以降どうなるかな、です。


 いちせさんとこの感想リンクで感想漁ってたら、フツーに好評ですね。
 ……いや軽妙な語り口という点でだけ評価するならそうなのかもですが、ロミオの本領はそこじゃないし人類~ではまだ左ジャブしか打ってねーぞと思ったけど云わないよっ!

 あと感想記事の中で空気系という単語を目にして、「糞ったれなジャーゴンばら撒くバカが居るとこうなるから嫌なんだ(sigh」とか思ってもいませんよっ!!


※追記
 重版一番乗りみたい。

2007年05月12日

オイディプス症候群オイディプス症候群

75/100

笠井 潔 / その他

発売日:2006-10-21

 読了ー。
 もう完全に「ミステリ批評とは」というか「ミステリとは」に興味ない人置き去りですね。置き去りってゆーか、向こうから刃物持って襲いかかってくるぐらいの勢いですね。前半は意外なほど普通にさらっと読めたんだけど後半は期待したとおりというか案の定の読み辛さでした。(折込済みなので別にマイナスではない)

「操りをめぐる問題」というか、「全てが犯人の意思によるものではない場合」(表現が微妙だ)の「推理」の意味、という点については確かに興味深いものがあると思います。が、なげーよw

 金と時間に余裕のあるミステリ馬鹿なら、ですかね……。(居るのか)
(矢吹駆シリーズとしては期待値どおりかと思います)

2007年03月11日

 本作の最大の欠点は、「2007年3月時点ではいつ文庫落ちするか全く不明で、単行本を買うのを躊躇してしまう」ということではないだろうか。(知るか)
 ……あ、ガチ百合を期待すると核地雷かもですが。(ややネタバレか?)


 山口雅也に「生ける屍の死」という作品がありまして。
 あれは「死んだ人間が生き返ってしまうという世界」を舞台にした「そういうルールの中での」ミステリだったのですが、本作をその流れで捉えることも出来るでしょう。つまり「全ての人間は生まれた時点では女性で、そのうちの一部が成長してから男性化する」という世界を舞台にした、「そういうルールの中での」ミステリであります。

 ……俺的には石持浅海がこういう作品書いた時点でストライク確定なのですが(VF1での鉄山靠投げぐらい確定)、ちゃんとストライクゾーンに来たのでもっと良しです。
(過去作品の感想⇒扉は閉ざされたままアイルランドの薔薇月の扉/あ、「顔のない敵」の感想書いてない……月じゃないよ敵だよ)(良い子は検索しちゃ駄目)

「生まれたときは皆女」という世界であるため、男は希少価値がある。必然的な帰結として、「レイプは女がするものである」。

 ……が、私の姉「優子さん」は、レイプされかけたような状態で殺された。何故? あるいは偽装?
 優子さん、あなたが秘密にしていたことは、何?

 てな感じで、主人公「遥」が姉「優子さん」を襲った事件に対峙する、という形で話は進むのだけど、この遥が(無駄に)カッコイイ。
 石持作品に多く見られる点だけど、「理性で感情を御している感」があると良いです。

 タイトルの「BG」「カイニス」は、作品全体のテーマとも関わってくるので説明しませんというか読めば判ります。(読む前に知っている必要はない)

 ……一点追記ですが「保健室の佐々木先生(作中数少ない男性)が総合的にカッコ良すぎるっていうか美味しいトコ持って行きすぎだぜ畜生」ですよ。
 ( ゚∀゚)彡 優男! 優男!

2006年11月20日

 アトポスで止まっていた講談社文庫の島田荘司作品を、御手洗潔のメロディ→Pの密室と読了して挑んだこのネジ式ザゼツキーですが、やーばいやばい、マジでマジでマ・ジ・で、脳に電気走りましたよ! (具体的には532ページ以降)

 スウェーデンで脳科学を研究している御手洗の元に、エゴン・マーカットという男が尋ねてきた。
 エゴンは過去数十年に亘って記憶がなかった。エゴンは幻想的な童話「タンジール蜜柑共和国への帰還」という作品を書いていた。高い木の上に作られた家、空を飛ぶ妖精、人口筋肉により空を飛ぶ乗り物……それは(現実のものとして捉えるには)全くナンセンスな物語だったが、しかし御手洗はこの童話こそエゴンの失われた過去を取り戻すための重要なヒントであるとし、推理を開始する……。


 ウチの読者が必ずしもミステリに詳しくないってことは承知していますが、漫画読みだろうとラノベ読みだろうとミステリ読みだろうと良質の「物語」に対する欲求は共通するものだろうと思うので、これは推さない訳にはいきません。
 ……本作の破壊力が特段に高い理由は、(この際だから煽るだけ煽ってしまおうと思いますが)伝説的傑作である異邦の騎士の構造を彷彿とするような物語構造であるという点があり、つまり異邦の騎士を読んだことがない人にはインパクトの幾らかは伝わらないものがあるかも知れませんが。

 島田荘司流の「幻想的で不可解な圧倒的な謎」(タンジール蜜柑共和国への帰還)がまずは冒頭で提示される訳ですが、本作が凄い(恐ろしい)のは実は最初の謎が解けた後(229ページ以降)から。
 この幻想的な童話の影に、現実に(童話以上に不可解な)殺人事件があった、というところまでは島田荘司の作風を知っている人間にとっては折込済の展開なのです。が。
 クライマックス近く、「過去の事件の解決だけなら僕(御手洗)の力だけで可能だが、エゴンの記憶を取り戻し、晴らすべき冤罪を晴らす、そのためにはもう奇跡が起こることしか道は無い」と御手洗が(あの御手洗が)云い、そして奇跡を起こすための手を次々と繰り出す展開は鳥肌というかなんというか……、近年忘れていた感覚でした。(脳に電気が走ったってのは比喩じゃなくて事実なんですよ!)

 ……ミステリの話とか忘れて良いですよ、クライマックス部分の圧倒的なテンションは、「もう奇跡が起こるしかない」「じゃあ奇跡を起こすんだよ、俺が!」ぐらいの熱さ。
 打った手とは? 奇跡は起きたのか? ……そこら編は本編読んでください、ですね。


 以下ガラっと話変わります。(本作の内容から離れます。)

続きを読む "島田荘司は何なんだ!?(褒め言葉)" »

2006年07月20日

サイボーグとして生きるサイボーグとして生きる

70/100

マイケル・コロスト / ソフトバンククリエイティブ

発売日:2006/07/01

 熱心に語る意欲はあんまりないので適当に。


 こないだ第九の日の感想書きましたが、第九の日読んで「身体を改造することによって拡張される『心』かぁ……」とか考えてるところへ平積みになってるこれ見つけて、「おおこれはなんてタイムリーな」てな感じであんまり吟味せず買ったですよ。
 聴覚を失い、手術で「機械の耳」を手に入れた人の……なんだ、自伝か。コンピュータ制御の耳を持った人がどう変わるのか変わらないのか、といったあたりに興味を持った、のですが。

 何処を最初に指摘したら良いのかなーとちょっと迷いますが、突き詰めると2点です。
1 自らの肉体を機械によって改造・改良する、ということと、失った聴覚を機械の力で取り戻すというのでは、意味合いが違いすぎて単純に比較できないという、冷静に考えれば当たり前のこと。(1を超えて5を10を目指すのか、1を割り込んだところから0.9を1.0を目指すのか、という話)
2 愛とか真顔で語ってんじゃねぇよ禿。(国の違いというかはいはいクリスちゃんクリスちゃんというか>誰)

 ……つまりさぁ、身体性の拡張が心/脳にどう影響するか、みたいなことに興味があったのに、そもそも拡張じゃないんだよね。「能力が劣っているときは自分に自信がなくて他者に無闇に攻撃的だったりもしたけど、能力を回復してみるとそれらのマイナス面も消え、人として一回り成長できました」のステレオタイプのど真ん中を行く話で、ガジェットは目新しいにしても「だから何」だよなぁ、と。
(逆に、「失った能力を回復する」という枠組みで捉えると「聴覚&機械の耳」という大掛かりな道具を持ち出してみても話の行き着く先が同じだった、ということが興味深いとは云えるかも。)
 いやあの勿論フィクションじゃないんだから面白いつまらないじゃねーんだという指摘はあるかもですが。

 それがえーと「1」の方で、「2」が中々鼻について、ねー。
 唐突に「愛とはつまり」みたいな話をしてくれやがるんですよ。最初の一回はギャグかと思ったけど、別にオチはないし何度も繰り返されるしで辟易すること山の如しです。

 俺の理解では、この本は──この人は「人間」という存在を色々な面で特別視していて(ある意味極めて「ムラ社会度」の強い人で)、しかし彼の陥った現状は「そのような思考方法」では処理するのが難しいものであり、がゆえに彼は「ムラ社会的気質を残したまま新しい現実と折り合いをつける」必要があり、実際に彼がどう対応したか──の話ですね。(推敲を放棄)
 初っ端からモヒ側の俺としては「聴覚無くすっつー大事件に直面してそれかよ」な面が多分にありました。

 結論としては「能力を補う系」の話は意味合いが全然違うからあんまり参考にならないな、という空気がつかめたのでまぁ良いや、ぐらい。(この本自体は正直どうでも)

2006年07月10日

第九の日 The Tragedy of Joy第九の日 The Tragedy of Joy

89/100

瀬名 秀明 / 光文社

発売日:2006/06/21

 内容についての情報全く無いまま購入&読了。
 ケンイチくんシリーズだったのか。(そのレベル)
(連作)短編集だったのか。(そのレベル)

 ……ということでですね、デカルトの密室の読了がちょう前提です。人間関係でも時系列でも、デカ密(いうな)の話題を引きずりまくりですので。


 をわwwwww

 ……えと~~。
 なんだ、色々と容赦ないな。奥付ん所に「著者渾身のライフワーク・シリーズである。」って書いてあるから油断してたけど、これの更に続編って出ないでしょ? ねぇ?

 前作では「ロボットの心」の話が中心でしたけど、今度は微妙に拡張して「心と身体性と人とロボット」の話とでも云うのかな、そんな話になっちょります。
 つまり、「人がテクノロジーによって身体を拡張することが可能であるなら、同時に心を拡張することも可能なのではないか」な感じの話ですね。……いえ、更なる説明とかはなしです。「心と身体性は不可分である」という事柄について議論の余地があるとしてもそれを展開するのはここではなく別の場所で、ここではそれは幾つかある前提のうちの一つですよ、と。

 ……で。
 前半2作はまぁよしとして、表題作「第九の日 The Tragedy of Joy」の殺伐っぷりときたらないです。その続きの「Duel」が無かったら正直やっとれん。
 ついでに、「恋愛科学小説」ってのも「Duel」のことですね。他は正直恋愛要素ゼロだわ。

 ああいや小説としては全然アリだとは断っておきますけど。


 前作んとき齋藤さんに「ケンイチくんの見た目の描写がないのが云々」てなコメントを(今は亡き旧サイトに)貰いましたが、本作中でまさにそれについて触れるやり取りがありました。

「尾形さん、あなたはご自分の小説で、一度たりともケンイチの姿を描写していない。わずかに身長と体重が記載されている程度です。なぜでしょうか。(後略)」
(第九の日 P305 より)

 以降、そんな問答が7ページぐらい続きます。読んでて疲れたよwww(褒め言葉)
 なのでえーと、読んでみたらいいじゃない、って思うの。(上目遣い)

2006年06月24日

上手なミステリの書き方教えます上手なミステリの書き方教えます

80/100

浦賀 和宏 / 講談社

発売日:2006/06/07

 ミステリじゃねぇよwww


 以下に、この小説のストーリーのほぼ完全な要約を載せています。
 2パタグラフ、2文です。

 ガノタガンダムオタクでキモメンでいじめられっこの八木剛士は、ガノタでキモメンでいじめられっこであるにも関わらず殺人事件のお陰で友人になった松浦純奈とやりたくて仕方がないが、そんなことを口に出して言ったら「ガノタでキモメンでいじめられっこな上に変態」になった挙句松浦純奈もドン引きで大変なことになるのが判っているので言わないでいる。(松浦純奈とは学校が違うので、「いじめられっこ」はまだバレていないのだ。)

 街で八木と松浦と他2人で居たある日、学校のいじめっこに偶然遭遇して学校と同じようにからかわれて醜態を晒したが、でも松浦他2人は特にドン引きすることもなく、むしろいじめっこの方をやり込めてしまったので、八木は安堵するとともに物凄く幸せな気分になったよ。

 以上。
「ストーリー」として抜き出せるのはマジでこんなもんです。

 で、このストーリーと直接関係のない「萌えヲタ共は見る目がないから死ねばいいんだ」「俺は生活のためにこんなものエロ萌え小説を書いているが、羞恥心はあるからオタクじゃない」な感じの超大モノローグが1章分あります。エロ萌え小説って要するに2次元ドリームノベルズみたいなもんです。シナモン姫。

 ……この小説については、浦賀和宏のパーソナリティを無視した如何なる批評も意味を成さないでしょうね。
 凄いことは間違いないですが、キワモノにも程があるので、人には絶対薦めません。手を出すかどうかはこの評読んでから考えるのが良いんじゃないカナ、ないカナ。

2006年05月10日

月の扉月の扉

85/100

石持 浅海 / 光文社

発売日:2006/04/12
出版社別 - 光文社

 ふーむ。
 不思議な作家だ。

 沖縄にカリスマ的な教育者のおっさんが居る。
 カリスマ的っつーかカリスマだ。世が世なら釈迦かキリストかってな感じの。……でも、諸事情により現在は留置場だ。いや悪いことした訳じゃないよ、不当逮捕というか誤認逮捕というか、まぁそんな感じ。
 でまぁカリスマなので、シンパも当然居る訳で、本作の主役はその中の3人。
 3人は考えた「どうすればいいだろう?」「ハイジャックしたらどうだろう?」「いいねぇ!」
 そして3人は飛行機をハイジャックし、子供を人質に機内を掌握し、管制に要求を突きつけ、そしてトイレで人が死んだ。
 ……いや、最後のは意味が判らん。

(念のため断っておくが本文はこんなブロークンではない)

 状況的にかなり無茶苦茶なはずなのですが、意外なほどさらっと読めてしまいます。「やられた!」という意外性こそないものの、状況(材料)を話に仕立てる手際の良さは、東野圭吾を彷彿とするものがあります。(過剰に無茶な設定や幻想趣味を引っ張り出すあたりは、東野圭吾の上品さを兼ね備えた麻耶雄嵩と云った方が近いかも知れませんが)

 ……今見てみると、評点高い割にコメント厳しいね俺>扉は閉ざされたままについて
 あちらの方が万人向けでかつテンション自体も高くて良かったと思いました。

2006年05月07日

アイルランドの薔薇アイルランドの薔薇

88/100

石持 浅海 / 光文社

発売日:2004/09/10
ジャンル別 - 文学・評論 - ミステリー・サスペンス・ハードボイルド - 日本の著者 - あ行の著者 - その他

 感想は後回しにしてだな、とりあえず責任者出て来いと。

 先週買ったのがまだ1刷だったけど、2刷出てるのかな? 出てるなら流石にこの派手すぎる誤植は直ってると思います。

 内容自体はえーと、ちょうクールです。クローズドサークルもの+テロ組織+プロの暗殺者という1990年代を舞台としているとは思えないド派手な登場人物たちが、推理小説のお約束どおりの推理劇を展開してくれます。(コテコテが故に暗殺者の正体がバレバレだったのはご愛嬌w)

 北アイルランドの武装組織NCF(架空)とIRAの間で和平交渉が秘密裏に進められていた。3年前には調印目前というところでNCF内の和平反対派(ダグラス)が仕組んだテロにより合意が流れたという経緯がある。
 NCF首脳部は、3年前の再現を避け和平を実現させるため、(今回も和平に反対し、裏で工作をしているであろう)ダグラスの暗殺を目論み、プロの暗殺者に依頼をした……。

 ……しかし。

 NCF内のゴタゴタとか3年前の事件とか、「今目の前にあるクローズドサークル」以外のファクターが絡んできて飽きさせません。(いや飽きるつーか一気に読み終えてしまったんですけど)
 あと探偵役のフジがクールすぎです。シリーズ化したら801方面の人気者になれること間違いなし。(そんな保証は要らない)

2006年05月04日

 これはピンでの扱い。
 暫く前に買って積みっぱだったのが、模様替えのドサクサで発掘されて「ああこれ読んでないや」と。

 ……いやぁ、見事にやられた。このオープニングならその締めは当たり前に予想できるんだけど、それでもやられたわ。

 真美は幼いころに双子の妹の麻紀と死別している。
 麻紀は事故で生死の境を彷徨って以降、時折おかしな言動をするようになった。「助けて! 誰かが私を殺すよ!」などと。
 麻紀が見ていたものは、所謂「サイコメトリー能力」によるものだった。(モノに人の思念が染み付いて残り、それを読み取ることが出来る、といったヤツだ)
 とりわけ「死者の声」は強烈であったらしい。(助けて! 誰かが私を殺すよ!)

 健吾(分かれた恋人)と連絡が取れなくなった。よりを戻したいとかそんなことではなく、借りていた本を返したいだけだ。というのが口実だ。(本来の借主から「代わりに返してくれ」と頼まれた本だ)

 真美は健吾の行方が気になる。

 ……要約が難しい。(引用じゃないからblockquoteじゃねぇとか固いこと云うな)

 ストーリーは上記のようには流れませんが、設定とかネタバレとか考慮するとこんな感じかなぁ、と。(健吾について下手に触れると色々ネタバレしそうだったんで)
 作中で実際にサイコメトリーな能力が表に出てくるのは1/3過ぎぐらいでしょうか。

 ミステリ的には健吾の行方がどうなんだという点が焦点ですが(ストーカーとかも出てくる)、キモは麻紀(&真美)のサイコメトリー能力。
 能力を元に色々と掘り返したくない過去を掘り返したりして、そして結末は読んでのお楽しみ、と。

 ん~、巧いです。

2006年04月16日

 前作ってのは云うまでもなく春季限定いちごタルト事件です。


 ……ええっと、ラノベレーベル外での米澤作品を正しく評価できるのは、(俺の理解では)ミステリ畑の読者なのですが──いや括弧付けない方が良いな、俺の理解ではミステリ畑の読者なのですが──、であるから本作終章の展開はアレだ、「やりやがったな米澤穂信」、と。
 前作の小鳩君にエラリィ・クイーン的なものを見ていればいるほど(とかクイーン読まずに語る俺)、本作9割までニヤニヤしながら読んでラストの流れで「なーにー!!?」って云うと思います。
 ああいや、ラストの流れで「なーにー!!?」って云うのはミステリ者か否かは問いませんけど。まぁなんて云うかヒント:「米澤版レイニー止め」、みたいな。
 いや止まると決まった訳じゃないですが。
(伏せたってどうせお前ら読むんだろ的開き直りメソッドでお送りしています)

 以下追記に。

続きを読む "[これはすごい][前作を読んでから]読後第一声が「これで終わり?」だった件。" »

2006年02月07日

扉は閉ざされたまま扉は閉ざされたまま

89/100

石持 浅海 / 祥伝社

発売日:2005/05
ジャンル別 - 文学・評論 - 文学・評論 全般

 このミス2位ということで手を出してみた。
 ちなみに石持浅海作品は初読。(その他ランキング等はここらへんを参照されたし。)


 まずは「極オーソドックス」な「本格」の「倒叙」の傑作だな、と思う。(第一印象。)
 ……「本格」の「倒叙」と限定したら、オーソドックスか否かって意味あんのかね、というのが第二印象。そんな感じで。
(「倒叙」がわからない人のために説明しておくと、コロンボとか古畑みたいな、犯人が誰かは最初から判っている形式のことです。)

 同窓会を期に再開したサークル仲間の7人。再開したこの期を逃さず、伏見は新山を殺害する。新山の死体は閉ざされた扉の向こう、それを知るのは伏見のみ。
 伏見は巧みに場の空気を誘導し、新山の死が露見するタイミング・状況をコントロールしていく。計画ははほぼ順調に推移した。「よし、これで死体が発見されるのは明日朝以降になるな」伏見はそう思った。
 しかし、碓氷が口を開いた。

 「本格」の「倒叙」と事前に断ったために、粗筋を書く意味がほとんどなくなっている気がしますがまぁそんな感じ。ストーリーではなく、犯人(伏見)がどんなミスをしたのか、そのミスを探偵(碓氷)がどう付くか、が興味の対象になります。
 そしてこの点、本作は非常にオーソドックスかつハイアベレージという印象。文章は真っ当、状況設定はそれなりに特異ながら、それ(特異であること)への一応の説明も立つし、更に犯人にも探偵にも、犯人/探偵として振舞うための、それなりの理由もある。
 兎に角穴が無くてハイアベレージという印象。

 ……オーソドックスとかハイアベレージを連呼しているので察しはついているかと思いますが、一押しに欠ける印象が若干あります。いや、ノベルズで200ページ強というのは、最近じゃ長編というよりも「長めの中篇」になっちゃうようなページ数ですし、「如何にも型通り」以上を期待するほうが悪いと云えなくもないのですが、ここまでしっかり書けるんなら、少々の水増しをして1000枚とは云わないまでも800枚級の長編に仕立てちゃっても良かったんじゃないかなぁ、と。
 というのは、伏見と碓氷のキャラが非常に立っているのですよね。(というか、ミステリのプロットに関わる部分以外はこの2人のキャラの描写ぐらいしかないとも云える。)「こいつら使ったらもっと膨らんだんじゃないの?」的な。この作者なら、少々の水増しで作品の質をスポイルしちゃうようなことはないです。
 ラスト付近の(碓氷が伏見を追い詰めたあたりの)この二人の会話、ミステリバカには非常に美味しゅうございました。


 ……しかしなぁ、これが2位かぁ……。
 いや悪くはないんだけどさ、もっと華のある奴があるんじゃねーのかなー、と。(と思ってランキング見直してみたが、でも俺が読んだ中じゃ「華のあるミステリ」自体が無いな。もっとさぁ、犯人と探偵が通った後にはペンペン草一本残らない、そういう死体の山を築くようなミステリが流行るべきだと思うよ?)

2006年01月21日